(探し物)
+1+
おさかなが、目をきょろきょろさせました。
おさかなは、ずうっと、何かを探していました。
それが何かは、だれにもわかりませんでした。
+2+
おさかなは、小びんを見つけました。
小びんの中には、おさかなの、探していたものが入っていました。
「ずっと 探してたんだよ」とおさかなは言いました。
+3+
おさかなは、探し物を砂に埋めました。
えらで、一生けん命、砂をかき、探し物を入れるあなをつくりました。
おさかなは、探し物を砂に入れると、にっこり、笑いました。
「ああ、やっと楽になれる……」
おさかなは、深い水の底へと、ぶくぶくあわをはきながら、そろそろ落ちていきました。
+4+
おさかなは、そろそろ落ちていった先に、ほたてを見つけました。
「ほたてさん、ほたてさん」
「なあんだい」
ほたてはこたえました。「ぼくのかわりに、探し物をしてくれないか」
「何を探すんだい」
おさかなはうっとりした目になりました。
「すてきなものだから、見たらすぐに、わかるはずだよ」
「ふうん。そんなにすてきなものなら、探してみようかな」
おさかなは安心して、また底へと、やすらかに落ちていきました。
+5+
海の中には、ただ、探し物をする、たくさんの生き物がいるだけです。
おさかなは、こっそり笑いました。
後には、無数のあわが、広がるばかりです。
(了)