隆は晴れて高校へ入学した。彼の入学した星空高校は県内屈指の進学校である。
彼はこの学校に入り、一流大学へ進学しようと勉強に励んでいた。しかし、彼はここの学校で不思議な体験をする。
それは世界史の小早川先生の存在だ。彼が口を開くとクラスの40人の生徒の大半は深い眠りに包まれてしまう。
その退屈な授業と彼の甘く優しいハスキーボイスは生徒をまどろみのせかいへ導くのだった。
隆は何ともこの授業がふんわりとしてて居心地が良かった。
これまで彼は小早川先生の授業で、山にハイキングした夢や高級料理店での会食の夢やヨーロッパを横断した夢や海の中で海底遺跡を発見した夢や原始時代で恐竜と戦った夢や戦国時代で侍になり合戦で戦った夢や宇宙船に乗って何処か太陽系よりもっと遠い惑星に行った夢など多数の夢を見た。
小早川先生のまどろみの声は生徒を何処か遠くへ導いてくれる声として生徒には定評があった。
しかし、小早川先生の受け持った生徒の歴史のテストは欠点だらけだった。そのせいもあって小早川先生は一年で何処か違う学校へ飛ばされてしまった。
隆ら生徒は高二になり小早川先生の魔法仕掛けのまどろみの声が聞けなくなったのを残念に思うのだった。
もう他の世界へは行けない。小早川先生は誰もが持たない特殊な力を持っているに違いない。
今日も小早川先生は何処か違う学校で生徒を別世界へ導いているだろう。
まどろみの声、それは何処か遠い別世界への誘いである。?