H温泉を目指して、市内を走る2台の車があった。
先を走るのが石塚クリーニング店のステップワゴンである。
三人のデブを乗せた車は軽快に目的地を目指していた。
デブワゴンに遅れる事5分。三人の失業者を乗せた白いイストが走る。
「このままだと、渋滞にハマりますよ。どうしますか?遼一さん」
ステップワゴンのステアリングを握るシンジが携帯電話に向かって言った。
「このまま渋滞を進もう。下手に回り道をするより速いはずだ。ナビに頼ってばかりだと、こういう勘が鈍るけど。どう思う?ここは地元の俺たちが断然有利だよ」
遼一の言葉にシンジはうなずく。
「はい。同じ事を考えてました。この渋滞なら迂回するよりは5分は速いでしょう。ナビなら間違いなく迂回を選ぶでしょうね」
遼一さん、さすがに落ち着いてるな。シンジは改めて遼一を見直した。
しかし…。まさかスーパーアイドルのタクヤと戦う羽目になるとはね…。まぁオレと遼一さんが組めば勝ち目はあるさ…。
シンジの顔は自信に溢れていた。