子供のセカイ。83

アンヌ  2009-10-28投稿
閲覧数[347] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「これから私たちは、“生け贄の祭壇”の中心部に向かうわ。そこには儀式を行うための部屋があって、丸い円が描かれた石の舞台があるの。あなたはそこに立って、私の合図を待ってちょうだい。」
ホシゾラは淡々と説明した。美香はホシゾラに聞いた。
「合図の後には、何をしたらいいんですか?」
「……番人が現れるわ。あなたは、その番人と取り引きをしなければならない。うまく話をして、命を取られるようなことだけはしちゃダメよ。」
「……つまり、その番人に私が何か犠牲となるものを渡すことで、“闇の小道”への扉が開くということ?」
「ええ。」
うまく話をして取り引きしなければならない、ということは、犠牲の大きさは美香の話術に懸かっている、と、そういうことか。
美香は、頭が沸騰しそうになるほど集中して、その時の場面を想像しようとした。どういったシチュエーションで、どういう犠牲なら、番人は満足するのだろうか。美香は死なずに済むのだろうか?
美香は、ふと気になっていたことをホシゾラに尋ねた。
「そういえば、ホシゾラさんたちは、“闇の小道”への入り口が封鎖される前までは、普通に迷い込んだ子供を助けたりしてたんですよね?」
「ええ、そうよ。」
「その時はどうしてたんですか?犠牲は必要なかったの?」
ホシゾラはにっこりと笑って、ゆるゆると首を横に振った。
「それは、あなたが知らなくてもいいことだわ。」
有無を言わせない口調だった。
美香はその無言の圧力に思わず体を引いたが、すぐに気を取り直した。
「でも、それを知っておかなきゃ、いろいろとよくわからないわ。番人はいつから扉を守っているの?覇王が番人を置いたから、誰も“闇の小道”へ行けなくなったってこと?」
「……いいえ。番人はずっと昔から扉の側にいるわ。いつも扉を守っている。」
なぜだかわかる?そう聞かれて、美香は素直に首を振った。ホシゾラは先生のように、ちょっと間を置いてから穏やかに答えた。
「そうしないと、想像たちが“真セカイ”の方へ溢れだしてしまうからよ。だから番人は犠牲を払わない限り、決して扉を開かないの。」
つまり、ホシゾラたちも光の子供を助ける時、何かの犠牲を払っているということだ。
しかし美香は、犠牲の内容の追及より、覇王と番人の関係性について聞きたかった。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 アンヌ 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ