東京へ上京して30年、私はすっかり関東人になってしまった。
しかし、私の中には故郷の懐かしさが込み上げてくる。生まれてから高校を卒業するまで私は愛知県の田舎町で過ごした。
私の故郷は海と山に囲まれ、自然に覆われていた。
港から見える船の群れ、浜風にあおられながら空を飛び交うカモメたち、海をよく見ればボラの大群が水の中からジャンプをして跳ねている。
そして、朝市での新鮮な魚の匂い、その匂いを嗅いで集まってくる野犬たち、辺り一面に広がる田んぼや畑。私は子供の頃、近所の子供達と小川でフナやザリガニを捕まえた事や秘密基地を作った事を思い出した。
何処までも続くのどかな風景、それが私の故郷だ。私の故郷を思う心は年が経つにつれて強くなる。
定年したら再び故郷に戻って悠々自適な暮らしをしてみたいと思う気持ちや、昔一緒に遊んだ仲間達と再会したい気持ちなど故郷を思えば思う程、心の中が懐かしさに酔いしれる。
やはり人生の最後は自分の生まれた地で終えたいものだ。ノスタルジア、それは人間の最も自然で素直な気持ちである。