「神の…使い…」
オウム返しに呟くレミーシュに、ゼルはニヤリと笑った。
「…神の使いならどうする?その身を捧げるか?」
真紅の瞳に意地悪く全身を舐めるように見られ、レミーシュは顔を今度は耳まで赤くした。
「…さ、さぁねっ」
「…で、どうなんだ」
「…そういえば…」
大きくなる鼓動を隠すように、やや声を張ってレミーシュが話し出した。
「最近…人が傷も何もなく死んでるのをよく見つける…って、仲間が言ってた。
ゼル…の言う通り、病でも事故でもない。
しかも、みんな生きているかのように死んでるの。
時間が止まったかのように。
詳しくは分からないんだけど…とにかく、ロロでは不自然だって」
「ここで死ぬ奴に、綺麗な骸はない。頭をカチ割られたり、腕を落とされたり、首だけだったり…な。女はたいてい犯され、綺麗なパーツは売買用に切り取られてる。」
メッツェが補足する。
「詳細を聞きたい。誰か分かる奴はいないのか?」
「リーダーなら…」
「ギルドのか」
「うん…フェルゼル兄が死んでから収まったリーダー。私はフェルゼル兄の金魚のフンだったから、リーダーが変わってからは位が下がって…会わせてもらえるかどうか…」
レミーシュは視線を下げ、物憂げな表情を浮かべる。
「…私がなんとかしてやろう」
とメッツェ。
「正直、人が死ぬのはどちらでもいい事だ。命はいずれ消えるものだからな。
ただ、あまり死なれるとこっちは商売あがったりなんでね。
それに、私もレミーシュも、ロロでは貴重な善人なのさ」
人間にしておくには惜しい奴だ。
久しぶりに、ゼルの好みに合う喋り口のメッツェに、ゼルの口元が軽く緩む。
「頼めるか」
「ああ。また進展があったら来る。あんたはまだここにいた方がいい。追われているなら、身の潜め方くらいは分かろう」
ゼルが軽くうなずくのを確認する事なく、メッツェはゆっくり扉を外へくぐっていった。
「…お前、いい奴に恵まれたな」
「…うん。メッツェは私のお父さんみたいなもんだよ」
サイズに自信があるのだろうか。レミーシュはまた豊満な胸をはった。