参加作品『ボストンバッグ』

 2009-10-30投稿
閲覧数[1078] 良い投票[0] 悪い投票[0]

いつもと変わらない
日曜の午後

オレは何気なく
部屋のふすまを開けた

押し入れの片隅に眠る
ボストンバッグ

ファスナーを開けると
カビ臭いニオイと共に
昔の思い出が蘇る

二十才前

オレは故郷(クニ)を
とび出した

何も無い街だったけど
何の不満も無い街だった

出発前の
駅のホームで
おふくろが詰めてくれた
おにぎりと
まごころ

おにぎりは
食べてしまったけれど

まごころは
ずっとバッグの中に
しまってある

都会の喧騒の中で
お前はオレと共に
厳しさを生き抜いた

打ちひしがれた日
お前はオレのかたわらで
震える夜を共に過ごした

時々オレは目をつむる

そうすればあの日に
いつでも帰れるんだ

陽気な仲間たちは
今では
テンデバラバラだけど

瞳の奥では
いつでも
無邪気に笑いかける

捨てられない
ボストンバッグ

これからも
オレの人生
見守ってくれ

そして窓を開ければ
くもり空

今日は
そんな天気も
わるくないな



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 翔 」さんの小説

もっと見る

詩・短歌・俳句の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ