組手争い。
市瀬の組手はすごい。
簡単に払い落とされる。
左手でフェイントを入れタイミングをずらす。
それでもきれいに弾かれる。
ガッ!!
スキを突かれて襟を取られた。
ヤバイ!!
新藤の背負い投げの時と同じ感覚が流れる。
来る!!
ヒュッ!!
体が浮いた。
早い!!
修二はギリギリでそれを感じ取れ体をずらしていた。バァン!!
「有効!!」
審判の声。
すかさず市瀬が寝技に来る。
修二はすぐに姿勢を立て直し、それを阻んだ。
審判から「待て」がかかる。互いに立ち、再び試合が再開する。
また激しい組手争いになる。
今度は修二も譲らない。
長い組手争いが続いた。
「待て。」
再び審判の声。
両者が立ち位置に戻る。
審判が腕を自身の前で回し、両者を指差す。
「指導!!」
指導(消極的と見られた場合などに出される注意勧告。互いにまだ組んでいない状態が長く続くことで両者に入ることもある。二回で有効相当の罰則、それから一回ごとに技有り、一本と続く。)
互いに指導が入り再び再開。
また組手争いになる。
市瀬が攻めのスタイルに変わった。
新藤の動きとそっくりだ。いける。
ガッ!!
今度は修二が組勝った。
市瀬の動きが少し荒くなる。
組手争いが均衡しても敗けるつもりはなかったのだろう。
瞬間、市瀬の右足が浮き足立つ。
来た!!
小内刈り。
スパンッ!!
市瀬の姿勢がきれいに後ろに倒れていく。
俺の得意技の一つなんだよ。
忘れてたか?
あのときだってくらったろ?
バァン!!
「有、技有り!!」
審判が一瞬つまってから言い直した。
技有り。
追い越した。
いける。
勝てる!!
バッ!!
ヒュンッ!!
バァン!!
えっ?