「…みんな…死んじゃった…」
レンは悲しげな様子でもなく
ただ遠くを見つめ
ぽつりと呟いた。
彼女のまわりでは
すでに政府によって
遺体が片付けられ
残ったのは
崩れた家々だった。
「…」
その隣でルカは何も
言うことができないまま
空を見上げた。
二人の間を冷たい風が
吹き抜けた。
「おい!生存者だ!
まだ生きてる者がいたぞ!」
遠くで叫ぶ声がし
二人は振り返った。
二人は顔を見合わせ
走り出した。
――「…怪我はないようだな…」
スキンヘッドの体のでかい男が
細い目をさらに細め
怯えきった小さな少女を
診ながら呟いた。
「いったいどこに
隠れていたんだい?」
その男―ダフは
怖がらせないように
微笑み優しく聞いた。
「…戸棚のなか…
ママが…隠れてなさいって…」
少女は目に涙を浮かべて言った。
「それで奴らに
見つからなかったんだな。
君は本当に幸運だった。
ところで、君のなま…」
「ミリー!」
ダフの言葉は
駆け寄ってきたレンの声に
遮られた。
「レン!!」
少女も彼女を見つけると
駆け寄り抱きついた。