私は強い者が弱い者を馬鹿にするのが耐えられない。所詮、人間なんて大差ないのに、必死に自分より劣った人を見つけて、自分の劣ったところを隠して。安心する。そんな構図は汚い。
でも、馬鹿にされてる人間も嫌い。相手に隙を与えてしまってるんだ。
だから私はこういう時、苛々してしまう。クラスの強がってる奴らにも、弱者を受け入れてしまう奴にも。
瀬戸ちゃんは私のそういう性格を知ってるから、素早く後藤くんのフォローに回った。もしくは、彼女の優しさからかもしれないけど。
すると、クラスの皆も我先にと散らばった台本を拾い始めた。
後藤くんはまた口癖の「ごめん」を呟いた。
「こういう時はありがとう、だよ。」
私はまたいらっとして言ってしまった。お節介かもしれないけど。
すると彼はこめかみ辺りをかいて、少し照れながら「ありがとう」と言った。
思ったより素直で、かわいらしい照れ笑いだったから、私もつられて笑ってしまった。
パンパン
手を叩く音がして、ドアを見ると先生が立っていた。
「準備は終わり?」
先生は余裕たっぷりの顔で言った。