僕は故郷に帰ってきた。
変わらない景色が懐かしい。
子供の頃よく遊んだ広場も、まるであの頃で時を止めたままの景色だ。
ただ、僕の背丈ほどある伸びっぱなしの雑草だけが、粛々と時を進めていた。
その広場の片端の丘には、深い横穴が開いている。
子供の時は知らなかったが、それはかつて防空壕だったらしい。
だからだろうか。今見ると、その穴の闇はより一層暗く、深く見える。
僕は思い出した。
昔よく隠れんぼして遊んだけど、ここに隠れたら絶対見つからなかっただろうなあ。だって広場はだだっ広くて何もないし。
興味本位で入ってみると、穴は本当に深くて、気圧の差だろうか、うーっと唸る風音が聞こえる。
僕は奥へと進む。
…一体どこまで深いんだ?
僕は少し寒さを感じて立ち止まった。
もう、入口が米粒みたいにあんなに小さい。
僕は思い出した。
昔先生が、この辺りで神隠しがあったから気をつけなさいと言ってたなあ。
…まさかねぇ。
僕は一抹の不安を鼻で笑い、再び歩いた。
穴はまだまだ続き、風の音も大きくなる。
まるで、あー、くー、という人の唸りみたいだ。
…気がつくと、もう入口は見えなくて、辺りは重い暗闇だけになっていた。
僕はケータイの明かりを頼りに、先へ進む。
…あー、くー、と風音。
あー、くー、あー、くー
あー、くー、あー、くー
僕は思い出した。
昔僕、あーくんってあだ名だったなあ。
よく遊んだひろくん、今何してるのかな。
引越してからまるで音信不通だけど…。
たどり着いた行き止まり。
もうケータイの電池もわずかだ。
結局何にもないのかぁ。
急いで戻ろうとした僕の目に、小さな人影が見えた。
まるで、漆黒の暗闇に隠れていたかのように。
ここで、隠れんぼしてたかのように。
あー、くん、あー、くん
あーくん、あーくん、
あーくんあーくんあーくんあーくんあーくんあーくんあーくん。
人影は、冷え切った声で言った。
「あーくん、やっと見つけてくれた。次は僕がオニだね。
……………………………ホラ、ハヤクカクレテヨ……………………………
…………。
終劇