クライアナノナカ

ディナー  2009-10-31投稿
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僕は故郷に帰ってきた。
変わらない景色が懐かしい。

子供の頃よく遊んだ広場も、まるであの頃で時を止めたままの景色だ。
ただ、僕の背丈ほどある伸びっぱなしの雑草だけが、粛々と時を進めていた。

その広場の片端の丘には、深い横穴が開いている。
子供の時は知らなかったが、それはかつて防空壕だったらしい。

だからだろうか。今見ると、その穴の闇はより一層暗く、深く見える。

僕は思い出した。
昔よく隠れんぼして遊んだけど、ここに隠れたら絶対見つからなかっただろうなあ。だって広場はだだっ広くて何もないし。

興味本位で入ってみると、穴は本当に深くて、気圧の差だろうか、うーっと唸る風音が聞こえる。

僕は奥へと進む。


…一体どこまで深いんだ?

僕は少し寒さを感じて立ち止まった。
もう、入口が米粒みたいにあんなに小さい。

僕は思い出した。
昔先生が、この辺りで神隠しがあったから気をつけなさいと言ってたなあ。

…まさかねぇ。

僕は一抹の不安を鼻で笑い、再び歩いた。
穴はまだまだ続き、風の音も大きくなる。
まるで、あー、くー、という人の唸りみたいだ。

…気がつくと、もう入口は見えなくて、辺りは重い暗闇だけになっていた。
僕はケータイの明かりを頼りに、先へ進む。

…あー、くー、と風音。

あー、くー、あー、くー
あー、くー、あー、くー

僕は思い出した。
昔僕、あーくんってあだ名だったなあ。
よく遊んだひろくん、今何してるのかな。
引越してからまるで音信不通だけど…。


たどり着いた行き止まり。
もうケータイの電池もわずかだ。

結局何にもないのかぁ。



急いで戻ろうとした僕の目に、小さな人影が見えた。
まるで、漆黒の暗闇に隠れていたかのように。


ここで、隠れんぼしてたかのように。


あー、くん、あー、くん
あーくん、あーくん、
あーくんあーくんあーくんあーくんあーくんあーくんあーくん。

人影は、冷え切った声で言った。




「あーくん、やっと見つけてくれた。次は僕がオニだね。



……………………………ホラ、ハヤクカクレテヨ……………………………
…………。







終劇



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