「…命懸けだぞ。」
優太は小声で言った。
「分かってるわ。」
涼子も決意した。
「じゃ、行くよ。」
幸輔は電柱から道路を見た。
そこには1人、こっちに向かって歩いてくる男がいた。
幸輔は手で『×』を作って、他の道に行くことをみんなに勧める。
すると、涼子が何かを発見したようだ。
すぐさま幸輔が駆け寄る。
「あれ…篠崎くん…。」
幸輔は、うつむいてしまった。
「あいつ…幸輔をいじめていた奴の1人…」
優太の表情が強ばる。
篠崎良太。同じ3年4組。そいつは1人で周囲を警戒しながら進んでいた。性格は、幸輔をいじめてたくらいだから、ガヤガヤしている方だ。
「…合流する?」
優太は首を横に振って、
「いや…止めといたほうがいい。幸輔が…」
すると幸輔が、
「それより、早く篠崎くんの方へ行ったほうがいい。もうすぐあっちから来る。さっき見た男。」
「……」
4人は良太の方へ駆け寄る。優太は、嫌そうな顔を見せない幸輔を見て、ちょっと複雑な気持ちになった。
「そっち…いた?」
涼子が聞く。
「いねぇ。」
「私たち、学区外へ出て、助かる方法を考えようとしてるの。どう?一緒に行動しない?」
「…分かった。オレも協力する。」
良太を迎え、4人で逃げることになった。
その最中、良太は幸輔に話し掛けた。
「ごめん…今まで。」
「いいよ。僕は大丈夫。一緒に頑張ろう。」
いじめなんてやってる場合じゃないって思ったのだろう。
幸輔はどっちみち、良太がそう思うだろうと感づいていた。
あちらこちらにいる、銃を持った男たち。
「とりあえず、桜川大橋を抜ければ、学区が違うから。」
涼子は走りながらみんなに告げる。
「そうね…。じゃあ、西の方へ行きましょう。」
この道路を東に向かって歩くと、川の方に出る。視界が開けるので、ほぼ見つかるといってもいいくらいだ。逆に西は、桜井駅へとつながっている。
電車の線路を越えれば、学区が異なる。
「狙うなら…駅。」
優太が突然言った。
「何で?」
3人は首を傾げる。
「電車乗ればいいんだよ。」
「…………」
何だ。それなら、簡単じゃん。
でも、金がないんだ。
逃げ場…0なんだ。
でも幸輔は、諦めてはいなかった。