神のパシリ 20

ディナー  2009-11-03投稿
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余計な物など何もない、死の主の部屋を思わせる空間に、玉座が一つ。

そこに、よこしまな黒蟻どもの頭がいる。

風貌は、とても柔和で穏やかに見える。ただでさえ細い目は、二人を捉えてますます細まる。
綺麗に切り揃えられた銀髪は、まるで貴族か小公子のようだ。

細い躯を玉座から起こし、その青年はにこやかに微笑を浮かべた。

「待ってたよ、レミーシュ。部下が不躾な事をしたらしいね。ごめんよ。
大丈夫、殺しとくから」

まるで見ていたかのような言葉は、最後にいびつに凍り付いた。

「…君がゼルか。はじめまして、僕が現在のギルドの頭、キアだ」

「ゼルだ」

玉座から降りたキアと握手をする。

…どくん。

ゼルの神経が脈打った。

…何だ…?

目の前の優男は、不思議そうににやけている。

「…で、話はメッツェ翁から聞いたよ。死に様なき死体どもの真相究明に来たそうじゃないか」

死に様なき死体。

うまい表現に、ゼルは少々感心してうなずいた。

「あぁ。上司に頼まれてな」

「上司…ふ〜ん、そうかぁ」

間延びした返答をしながら、キアはレミーシュを見た。

「ごめん、可愛い子猫ちゃん…席を外してくれないかな」

「…は、はいっ!」

レミーシュは怯えて尻尾をぱんぱんに膨らませた子猫のように、すごすごと退出する。



ゼルとキア、二人になった。

「フェルゼル…とかいう前の頭に似てる…というか同じらしいね?」

「またその話か。いい加減聞き飽きた」

「…その様子じゃ、何も知らないみたいだ」

「…どういう事だ」

「…いや、気にしないでよ。死に様なき死体についてだけどさ…
こっちとしては協力しても利益がないんだよね。ま、あんまり死人が出過ぎるのは確かに困るんだけどさ。それにたいした情報持ってないし。

でも今、僕の組織だからさ、ここは。僕のさじ加減なんだよ。

…で、協力してやってもいいんだけど…」




それ以降、沈黙が空間を包み込む。

「…続きを言え」

キアは、笑った。
その笑みは、今までと違った。

「話してくれないかなぁ、君が知ってる事ぜーんぶ。




…君、神のパシリでしょ」

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