『だったら、奈々さんと一生話すな』十番が言った。
『それだと奈々さんを不愉快にすると思うけど』
『だったら、会員になれ』
きりがないな、と思った。
『わかっただろ。お前は会員になるしか道はない』太郎は言った。
『……わかった』
もうダメだ。
『よし。圭護の会員番号は百五十七だ』
太郎はいつもバッチを持ち歩いているようで、すぐにポケットからバッチを取り出した。
『今からつけるの?』
『当たり前だ!』十一番が言った。
よかったね十一番。やっと話すことができて。
ある意味僕に仲間ができた。望んでないけど…。
あまりのショックで数日間は夜、歩くことができなかった。
『圭護、お前もっと体を鍛えろ』
ある日、太郎が急に言ってきた。
『な、何で?』
『お前があまりにも貧弱すぎるからだ』
ほっといてくれ、と思った。
『今日から毎日走れ。まずそれからだ』
歩くのはいいが、走るのは嫌だな、と思った。
土手を通るのはやめよう、と思いながら僕は夜道を走っていた。走っているといってもほぼウォーキングくらいのペースだ。今はこれが限界だ。