キャッチボール 第59話〜最後の手紙〜

るー6  2009-11-04投稿
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「だって、僕を守ろうとしているケンカが多いじゃん。正義のヒーローみたいだったよ。」
「ヒーローって…お前…ヒーローって…」
「バーカ。調子に乗るな。」
「…だな。」
2人の間に暖かな風が吹き抜ける。
「あとさ…これ…プレゼント。」
「えっ…あけていい?」
「なぜか、お父さんからの手紙も入ってるんだけど…。まぁ後で読んで。」
「あ…。あぁ。」
まだ幼い手でプレゼントを開ける。
すると、
「バ…バット?」
「それ欲しそうだったから…」
「…ありがとう。」
「まぁ、それで高校でも野球、頑張れよ〜。」
「うっしゃあ!」

でも、この嬉しい一時も、「岬。そろそろあっち行くぞ。」
僕は、ずっと足元に置いていた重い荷物を抱えて、
「じゃあ、そろそろだって。」
「あ…そう…。」
急に悲しそうな顔になった龍吾。
「…今まで、僕を支えてくれて、ありがとう。」
「今度、お前の家、行くから。」
「うん…待ってる。」
本当は、行けないのに…。
僕は車に乗った。
車はゆっくりと走っていく。
「みーくーん!また、キャッチボールしよう!オレ、待ってるー!」
「もちろん!」
「みーくんは、オレの大切な親友だ!」
「ありがとう!こっちもだよ!」
車は、どんどん速くなる。龍吾も、追いつけなくなった。
だんだんと、龍吾の姿が小さくなる。
「本当に!ありがとう!」車の中では、泣き崩れる僕がいた。
これで、本当に会えない。あの真実を知ってしまった以上、さらに会えないと思う。
龍吾は、本当に大切な親友だった。
ありがとうの気持ちしかない。この事を大切にして、これからを生きる。
「僕…頑張るよ。」
そう言って僕は、次へと歩み始めた。
龍吾とは、別の道を。

もう車は行ってしまった。龍吾はバットを握りしめ、その場にしゃがみこむ。
「もう…会えないのか…」昨日、一晩かけて姉ちゃんと相談した結果、オレは名古屋に行くことに決めた。でも、本当はこの街にいたいが。
龍吾は手紙をとり、封を開けた。
読んでみると、
『拝啓 龍吾くん
今回は岬の進路の関係で、この友情を引き裂くことをしてしまって、
大変申し訳なく思っております。
また、龍吾くんに父親としての教育を年上ながらに注意された事は、今後も反省していきます。
岬の精神状態も、龍吾くんと出会ってから少しずつ回復してきました。大変感謝しております。

続く



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