いつものコースと違うので、何だか新鮮な気分になった。
しばらく走ると両腕・両足に乳酸がたまってきたので歩くことにした。
『圭護、何してるの?』公園の前を歩いていると、奈々さんに声をかけられた。
『え…何って、散歩…かな』
なぜ奈々さんがここにいるんだ。
『奈々さんこそ、何してるの?』
ここは取り乱さず冷静にごく普通の会話をしなければ。
『家の中暑いから外に出て夜風をあびてたの』
驚いた…。なんだこの、ドラマみたいなご都合主義の偶然は。
『そ、そうなんだ…。僕も家の中は蒸し暑いから外に出て散歩してたんだ』なぜか嘘をついてしまった。
『ふーん』奈々さんは無関心そうに言った。
『………………………』
『………………………』
沈黙が続いてしまった…。これはやばい展開だ。何か話題を出さなければ。
『つ、月が綺麗だね…』
これで…どうだ!
『それがどうしたの?』
『な、何となく…』
『………………………』
『………………………』
逆効果だったかもしれない。
『この前、ありがと』
僕は一瞬何のことかわからなかった。
『いや、そんな…』
そうだった…。この話題があったんだ。