あたしは顔を見られないように
慌てて翔ちゃんに背を向ける。
でも遅かった。
「何や、真央
お前また泣…」
「わっもうこんな時間やん!
翔ちゃん帰ろー!!!」
翔ちゃんの低い声を遮って
あたしは鞄をひっつかんだ。
「剛、じゃあねっ」
あたしは翔ちゃんの背中を押して
教室の外にでた。
自転車で20分もかからない道を
あたしと翔ちゃんは
自転車を押しながら
毎日40分もかけて帰る。
周りから見れば
あたし達は彼女と彼氏にしか
見えへん。
でもそんなんじゃない。
翔ちゃん――翔太は
中学からの友達。
同じバスケ部で仲が良かった
和樹とのつながりで
あたし達は仲良くなった。
そして和樹のいない今も
その関係をあたしは変えない。
「また泣いた?」
翔ちゃんがあたしの顔を
覗き込んで聞く。
「泣いてへん!」
あたしは顔を背けた。
「何があったん?」
翔ちゃんに嘘はつけない。
翔ちゃんの観察力は
いっつもすごいから。
あたしは仕方なく
バンド解散の話をした。