連れて来られたのは資料室の前。
「早稲田…だっけ?俺に何か…「ふざけてんじゃねぇぞ。」
突然胸ぐらを掴まれ息に詰まる。
「調子乗ってんじゃねぇぞ『IC』。」
「何を…」
『IC』を知っている辺り、彼も異能力者なのだろうか。
「惚けんな。
若菜の顔に傷つけやがってっ!」
胸ぐらを掴む手に更に力が加えられ、正直苦しい。
「は…?」
彼の言っていることが理解できない。
火葉は『若菜』など知らないし、増して女の子(だと思う)の顔に傷などつけた覚えもない。
全くの濡れ衣だ。
「誰かと勘違いしてないか?
俺は若菜なんて子知らないぞっ」
「ふざけんじゃねぇ!」
少年が怒鳴り声を上げる。
しかしキレられても、知らないものは知らないし火葉には何の関係もない。…筈。
「うるさいわよ、早稲田」
どうやってこの場を切り抜けようかと考えているとつい三日前に聞いた声が後ろから聞こえた。
「若菜…なんで…」
早稲田とかいう少年の目が大きく見開かれる。
「アンタ、ここどこだか分かってやってる?」
呆れたような声。
ガラッ
資料室のドアが開かれ、中から出てきたのは…
「杠!」
「若菜!」
二人の想像通りの人物だった。
「アンタの怒鳴り声、中まで聞こえてるわ。」