水
それは生命の源であったり
空から落ちるしずくであったり
海を作っていたりする
何よりもやわらかくて
この手に乗せてはおけないけど
指の隙間からこぼれたり
瞳を清らかに覆ったりするそれが
私は少しだけ好きだったりする
水
水はどんな気分だろうか
何人にも阻まれない水
誰にも救い上げてもらえない水
すべてを押し流す水は
どんな想いで存在しているのだろうか
深い森の岩間から湧き出る澄んだ水は
ぷかぷかと浮かぶ空き缶やビニル袋を背負って流れていく川は
人間をどう思っているのだろうか
大切な水
私たちの生命のもと
やわらかいもの
水
その愛おしさに気づいた人が何人いるだろう
私は水の悲しみを想いながら
グラス八分目までの水を注ぎ
容赦なく飲み干した。