天使のすむ湖

雪美  2006-08-08投稿
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 あれから、どのくらい時がたつだろう、ほんの青春時代の二年という月日が、今でも彼を天使の湖に時々引き戻されていく・・・・・

 あれは高校二年の夏休み、相馬一樹はピザ屋のアルバイトにあけくれ、きっかけは遊ぶ金ほしさにはじめたことだった。

 一本の電話が鳴るー
「えっ?山奥の白い建物?」
山の奥には確かに別荘らしきものはあるが、この辺りではお化け屋敷とうわさされたところからの電話だった。
「誰が行くんだよー」
三人いるバイト仲間のジャンケンに俺は負けた。
最悪だーただでさえお化けは苦手なのになー

バイクを走らせながら、本当に人が住むのか心配になり、山を走り20分が発とうとしていた。ようやく湖と白い別荘と思われる建物が見えてきた。

目を凝らすと天使が湖のほとりでたっていた、一瞬息を呑んだ、いや違うあれは生身の女性だ、霧が深く羽のように見えたのだった。
「ビザ屋です」と名乗ると彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、待っていたのよー」
「葛巻さんでいいんですよね」
「そうよ、霧が深い中ご苦労様、よかったら私と食べていかない?」
いきなり誘われた。予想外な展開に答えにつまっていた。
「バイトの途中ですし、あのー」
「いいじゃない、今日はお手伝いのキヨさんが帰って一人じゃ味気なくて」
霧がまた彼女を少し包み、神秘的に映し出していて、その奥はどこか寂しそうで肩にかかる髪がふわりと風になびいた。

 結局一緒に食べることになり、バイト先には霧が深いからゆっくり帰ると電話を入れた。
そして、アーチ状の門をくぐり、白く重い扉の向こうには、高級ホテルのラウンジを思わせる広々としたつくりに赤じゅうたんがひかれていた。バイト服の汚い格好で、緊張が走った。

ダイニングにつくと、彼女は俺を覗き込み
「どうしたの?そんなに硬くなってー」
「あんまりすごい建物に高級ホテルみたいだなーと思ってー」
テーブルもイスもヨーロッパ調の作りで、壁には天使の油絵が飾られていた。
「私は葛巻香里、あなたは?」
「俺は相馬一樹、甲斐高校二年です。」
ピザを慣れた手つきで切り分けて、お皿にぽんとよこした。冷めたピザの味はどこか懐かしい味がした。



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