神のパシリ 24

ディナー  2009-11-06投稿
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「…何…?」

「だから、僕も神のパシリなの。君と同じなんだよ」

キアはそう言ってから、何事か呟いた。
人間にはわからない言語のものだ。

すると、キアの切断された傷口が、ゆるやかにではあるが接着されていく。

ゼルが大鎌を操作した時と同じ光景だ。

「…ほぅ」




「…僕は、月の女神のパシリさ。
月は夜や闇を冷たく照らし、人の闇を含めて照らす事で、暗闇に潜む邪神を縛りつける。
それが月と、月の女神の役割さ。
封じられた悪神には、厄介な存在かもね。」

座り込んだまま、キアは指を鳴らして先程の女従者を呼び寄せ、シャンパンを持って来させる。

「君もどうぞ」

「…いただこう」

二人は座ったまま、冷えた弾ける液体を流し込む。

「…君は、その大鎌だから、さしずめ死の神のパシリかな?」

「…あぁ」

「なるほどね。
月の女神は悪神、邪神を縛る存在。
でも、死の神は違う。
死と月は密接な関係にあり、月は死の理解者でもある。
うちの主は神々の中では変わり者だし、どうやら死に関して違う価値観があるみたいだし。
…君が死の神のパシリでよかったよ」

そう笑うキアの顔は、もう冷たいものではなかった。

邪な者には凍てつくような月光が、
夜を愛し尊ぶ者には温かく荘厳な月光がさすように。

「僕は、元々あんまり命令に忠実に従う方じゃないんだ。主も結構放任主義だしね。
で、人間世界ってさ、
野蛮で、
薄汚くて、
欲まみれで、
臭くて…

でも、楽しいじゃない?

だから、月の女神のパシリをしながら、人間の世界を楽しんでる、って訳だよ。
最近自分でもやり過ぎな気がするけどね」

「月の女神は仕事が少ないからな、呑気なものだ。
こちらは多忙を極めている。
人間が死を軽んじ、冒涜するのが今の人の世界では美徳とされているからな」

「辛口だね…でも、まぁ事実だろうね。
うちの主には、人間が歪めつつある天秤を釣り合わせる手助けを、もっと間接的かつスマートにやれ、とは言われてるよ」

「我が主には我が主のやり方がある」

「ごもっともだよ」

酔狂な理解者に、ゼルは鼻をふん、と鳴らした。



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