とりあえずテーブルの近くに座った。
僕は君を見た。
君はうつむいていた。
正直うつむきたかったのは僕だった。
僕は君に振られたと思っていた。というか現に振られていた。
そして君に酷いことをしたと思っていた。
そして今は君の知り合いの家。
当然知り合いの人は君に味方するだろうし、知り合いじゃなくても事情を聞けば君につくだろう。
そして知り合いというのは大人達で、しかも僕の知らない世界の人達だった。
君が心配で家を飛び出したはいいが、予想外の状況になってしまった。
僕は悪いことをして、職員室に呼び出された小学生の心境だった。
しかももう振られていたのだ。
もう君は僕のことを嫌いになっていると思っていた。
僕の顔など二度と見たくないはずだと思っていた。
そう思うと君に声をかけることも出来なかった。
君の安全を確認した以上僕はその場にいる意味を無くしてしまっていた。
自分のしたことを批判され、罵られる前にこの場から去りたかった。
そして何より君からしっかりと別れの言葉を聞くことを恐れていた。
この場にいたらいずれ聞くことになるだろう。
受け入れるしかないのはわかっていた。
もう受け入れていると思っていた。
だからこそやめて欲しかった。
わかった。もうわかった。だからもう何も言わないでくれ。
そう言って帰りたかった。
傷付きたくなかった。
しかしもう電車はない。
どうしよう…。
「話は大体聞いた」
男の一人が口を開いた。
「でも安心してくれ。俺達はどちらの味方でもないよ」
その人はまるで僕の気持ちを見透かしているかのように言った。
「電車はもうないんだろ? 今日はここに泊まっていきな? こんなきったねぇ場所でよけりゃ遠慮はいらねぇよ?」
そう言って笑った。
「すいません、ありがとうございます」
僕はそう答えながら、なるようになれと腹をくくった。