「これが・・・あの、不吉な予感かな」
タクトは自嘲気味に呟くと痛む体の節々に顔を歪めながらゆっくり立ち上がる。
「シンニュウシャ、ハイジョ」
相変わらずのゆっくりとした速さで甲冑はタクトに近づいてくる。
「だけど・・・その扉を開けるまでは、負けられない」
タクトは荒い息を整え、剣を構えた。
「・・・父さんの遺した剣、この世で一番固い鉱石、ベルズ鉱石の剣だ」
タクトは残された体力を絞り出し、叫び声と共に甲冑に向かって駆け出した。
甲冑はそれと共に身構え、タクトの攻撃に備えた。
最後の攻撃、タクトはそう心に決めていた。
甲冑にある程度近づくとタクトは飛び上がり、さらに大きな叫び声と共に甲冑に斬りかかった。
「ヨワイ」
「どうかな?」
剣と剣がぶつかり、火花が散る、甲冑はタクトを弾こうとした。だが、飛び上がって得た力は強く、弾けない。
「負けないさ!こんな所で」
タクトの剣は甲冑の剣に少しだけ亀裂を入れた。
「ナンダ」
「これで、終わりだ!」
タクトは残された力を全て出し切り、剣を打ち破った。
「ソンナ」
真っ二つになった剣を持ち、甲冑は成す術がなくった。
タクトは剣を打ち破った力をそのままに甲冑を斬った。
「はぁはぁ・・・」
甲冑は暫時の沈黙の後、バラバラになって砕け散った。
「・・・人は入ってなかったのか。良かった」
タクトはその場に崩れ落ちた。
懐から鍵を取り出すと第3監獄へ這って行った。
なんとか扉の前に来ると扉の取っ手を掴み、なんとか立ち上がると扉を開けた。
「誰だ?」
「ルパス兵か!」
「タクトさん!」
久しぶりに聞く声に安心したタクトはその場に倒れた。
目が痛い。そんな感覚を覚えた。
「気がついた!」
「大丈夫か!」
パールとウェドの声が聞こえる。
「ここは?」
「慰めの牢獄から離れた『ツェーノ』という町の廃屋よ」
「フラットは!」
起き上がろうとしたが、力が入らない。
「ここですよ」
フラットはパールとウェドの後ろで笑顔を見せた。
「喜べ!牢獄の中の人達は無事に全員救出したぞ」
「あなたも含めてね」
ウェドとパールは笑顔を向けてきた。
「それからもうひとつ、いやな知らせだ」
ウェドが曇った表情を見せた。
「ウェド、わたしから言うわ」