突然、雲を割って、空から巨大な手が降りてきた。
そしてその手は、彼と戦車の間に壁のようにそそり立った。
彼に命中するはずの戦車の砲弾は、その手に阻まれた。
その手は彼のボディーをつまむと、天へと引き上げていった。
「ねぇ、この駒おかしいんだよな。ほかの駒と全然動きが違うんだもん。壊れてんじゃないの」
少年はそう言って、手を広げた。
その手の中には、小さな黒いロボットがカタカタと動いていた。
その右足は故障している。
「おいおい、ゲームに負けそうだからって、駒のせいにするなよな」
ゲーム盤を挟んで座っているもう一人の少年が言った。
「本当だよ。戦場で逃げてばっかりいるんだもん。それとさ、この看護ロボットだっておかしいんだぜ」
少年はゲーム盤から黒い看護ロボットもつまみ上げた。
「今は待機中だから動かないはずなのに、さっきからウロウロ歩き回ってるんだぜ。不良品だよ、この二台は。こんなのが混じってたんじゃあ、勝てるゲームも勝てないよ」
そう言って、二台の黒い小さなロボットを机の上に置いた。
「分かったよ。じゃあ僕も同じ駒を取り除くよ。それなら条件は同じだからいいだろ。ええと、これとこれだな」
そう言って、盤上から二台の白いロボットを取り除いた。
「よし、じゃ続きをやろうよ」
「うん」
二人の少年は再びゲームを開始した。
二人はあまりにもゲームに熱中していたので、少しだけ開いた窓の隙間から、二台の黒いロボットが抜け出していくのには気がつかなかった。
完