「…な、何だと…?」
月のパシリから次々語られる事実に、いい加減ゼルは目眩を覚え始めていた。
「…多分、だけどね。彼女には並々ならないモノを感じるんだ。まして、この屑だらけの街では尚更だよ」
ゼルの記憶の糸が深海に垂れ、何かをサルベージしようとしている。
………光の一翼。
いや……
……白き者。
いや……
…我が名は……
………レミエル。
「まさか……」
「ん?思い当たるフシでも?」
「ここに来る前、光の小間使いと一戦交えた。
その白き者は翼を携え、レミエル…と名乗った……!」
「…!…ビンゴだね」
キアも面喰らったようだ。今までになく細い目が見開かれている。
「…光のパシリはあまたいるのは知ってるかな?なんせ今や人類の希望の象徴な神様だからね、光の神は。
その中で、高位の者以外のほとんどが人間を動力源、力の源としてる。いわば一心同体に近い。
人間の信仰心を練り上げ、人間に…
そう、寄生するかのように光のパシリは生み出されるのさ。
神様なのに…何か卑しい感じだよ。人間に執着しながら、それを利用して力をつけようとしてる。
やはり、自分の世界が必要なのかなぁ、どんな神様もさ」
「…さぁな。主以外の神に興味はない」
「ま、ともかくそんなワケだから、撒き餌はレミーシュでいいんじゃないかなぁ」
そう言うキアの表情は、どこか悪戯っぽく、
『わかるよね』
とでも言わんばかりだ。
「…ほら、上手くいけば僕らの手を汚す必要なんてないかも知れないしね」
そのヒントで、ゼルは理解し、思わずにやついた。口元を片方吊り上げ、白い歯がこぼれる。
「なるほど…考えたな、夜の光め…」
その言葉は賛辞だ。
キアは満足げに目を細めた。