予告通り、信と後輩たちは審査に受かってきた。私は
「…おめでとう」
と言いながらも、心のどこかで祖父がこの時期に死んだことを酷く恨んでいた。
…その頃からだったのかもしれない。
私が自身に嫌悪感を抱き始めたのは。
私は８月末に別会場である審査を単身 受けることにした。その日は、信が転校する２日前だった。
信は、私の練習によく付き合ってくれた。
それは、単に信が剣道を好きなだけで、そして信にとって私は世話の焼ける同級生…それだけであったと私は知りながらも、それでも嬉しかった。
信は、私が小学１年生の頃から好きだったヒトだから…。
「あと３日かぁ…」
昇段審査１日前、ため息混じりに信が言った。
「転校、嫌？」
私が聞くと、信はきょとんとして私を見た。
「そんな嫌そうな顔しとった？俺」
自分で意識しないうちに、そんな顔をしたんだろうか？
…今までにないくらいの、消え入りそうで儚い顔。
「別に。発言から推測しただけ」
「あっそ。あ、そういやさ、今日ｹﾞｰﾑ買ってね、マジ面白かったけん!!」
話が変わり、にこにこと信は話し始めた。
私は、そういうことがあっても特に気に留めない。留めないようにしているのだ。
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