…呆気ないものだ。
所詮、老人は老人に
過ぎないと言う訳だ。
「こちらネメシス、
目標を暗殺、ただ今
から帰還する。」
「了解、帰還ルートはJ6
で帰還しろ、以上。」
僕にとってはたやすい
事だった。ただ暗殺して
帰還するだけ。
幼い頃から繰り返した事
だからだ。
暗殺者『ネメシス』と
しての顔と、中学生で
ある『神崎 零』として
の顔…。
だから、僕には名前が
ない…ネメシスはCNで、
神崎 零も一般市民と
して過ごす為のものだ。
そうして僕は…あの日
まで…あの日までは…。
今は組織を脱退し、
そして、組織自体も解体
された…となれば…
「暗殺者『ネメシス』
でもなく、一般市民
『神崎 零』でもない
僕は何者なんですか?」
そんな現実味の無い話を
誰が信じると?仮に真実
だとしても…
「信じる信じないは勝手
ですがね。」
誰も信じるわけない…
確かにあの動きの証明に
はなるけど。
「とりあえず、上に
行きましょう。多分、
進入禁止は下の階から
なると思うわ。」
そうして、私達は上の階
を目指していた。
零が先行して行った
おかげか、罠にはかか
らずに済んだ。
そう、罠には…
突如零は私に飛び掛かり
、私を押し倒した。
それは最近できた
トラウマを十分に思い
出させた。
でも、すぐに
立ち上がったので何とか
事なく済んだように
思えた。
零の背中にある一筋の
傷と、先端が濡れている
矢…そして…
零の動きは鈍っている…
どこか息苦しそうに、
ふらふらしている。
毒?どのくらいかは
解らないけど、殺傷力
まではなさそう。
でも、現状で動きを
鈍らせるのは致命傷に
なりかねない。
時間が…少ない、進入
禁止エリアになるまで
時間が少ない。
残り10分、さっきの
警告だ。5分以上居たら
駄目だから、15分だ。
走れば十分に間に合う
けど、零は走れそうにも
ない…。
どうすれば…。