カーニバル!♭1

四十万  2005-12-04投稿
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『ケルベロスは仕事の時にしか殺しはしない…この噂は本当だったようです。ケルベロスに後頭部を撃たれながらも生還を果たしたF部隊所属の…』
大通りに面した、昔ながらの店構えをした電器屋。その前には人がたくさん立ち止まっていた。古ぼけた外装とは不釣り合いな最新型の液晶テレビが、ショーケースごしにギッシリと見える。その画面を食い入るように見つめる通行人たちに、その他の通行人たちはたじたじだった。あとちょっとで修羅場と化しそうな通りに、顔色の優れない大人びた少女が路地からふらりと現れた。彼女もまた液晶画面を見て、足を止めた。
「あなたもあの狂犬に興味があるの?」買い物帰りであろう主婦が少女に話しかけた。肩の上でおさまる真っ黒な髪の毛と瞳から、アジア系だと推測できる。
「有名人か何かですか?」大して声を張り上げたわけでもないのに、彼女の声には芯があった。
「国際指名手配書“赤い紙”にも載ってる犯罪者よ。大量殺人を犯した化け物で、世間じゃケルベロスって呼ばれてるの」ベラベラと喋る主婦に少女は尋ねた。「大量殺人に認定されているのに、無差別殺人はしないんですね…」画面に映る怪我人は誰も息をしていた。少女は老婆に礼を一言言うと、ふらりとまたひとごみに消えた。「ちょっとあなた!」主婦が手を伸ばした先には誰もいない。彼女は胸元の小型マイクに語りかけた。
「撒かれた!そっちは?」『同じく。あのヤクシマ家のハシクレだからな。何をしでかすか分からんぞ』「…必ず捕まえて日本へ返しましょ」主婦は液晶画面を睨む。「狂犬もあの子の前じゃ子犬ね…」通信は途切れた。 →ツヅク

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