何もない駅に降ろされ、薄暗い山の中を、途方にくれつつ、線路伝いに歩き始めた。
少しずつ…少しずつピンク色の空がコバルトブルーへと染まり始める。
辺りでは、虫の鳴き声と、微かに聞こえる木立の擦れ合う音しか聞こえて来ない。
不安と寂しさが、歩けば歩く程、増していく。
「どうしよう…。。せめて、民家があれば…。。」
不安を押し殺す様に、ひたすら歩き続けた。
気がつけば、辺りは真っ暗で月灯りがぼんやりと自分と線路を照らしていた。
もう、どの位歩いたのだろう。
前方に小さな光りが見えた。
「あれは……!?」
一瞬、立ち止まり、我に返って、光に向かって走り出した。
精一杯の力を振り絞り、靴を両手に握り締め、全力で前へ前へと…。
ようやくたどり着いたのは、古く、今にも壊れてしまいそうな、掘っ立て小屋だった。
その小屋からは、夕食だろうか…、食事の香りが漂っていた。
様子を伺いつつ、
[コンコン…]
ドアをノックした。
返事はない。
「すみません!!どなたかいらっしゃいませんか!?」
やはり返事はない。
少し間を空け、恐る恐るドアノブに手をかけた。
ゆっくりとドアを開け、中を見渡す。
自分の目を疑う。
そこには先程の列車の中で消えたはずの老人が薪を火に焼べながら、座っていた。
{続}