悲しげに僕をみつめる君は、何を思っていたのだろう?
『赤色が好きです。』
いつだっただろうか、僕は嘘をついた。
本当はどの色にも、興味すらないのに、そのとき浮かんだ林檎の色の赤が好きと嘘をついた。
本当にそれは、ちっぽけでどうしようもない嘘だったけど、そこからだ
戻れなくなったのは。
嘘を嘘で塗り固めた道に、花など咲やしない。
僕は消えるしかないんだ。
僕は、虚げな眼で空があるべき場所を見上げた。
でも、そこにあったのは、赤色だけだった。