遠い遠い君へ

くろ  2006-08-09投稿
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私は状況を理解できなかった。
スケッチブックが私達の方に崩れてきたのは分かったけど、
こんなことになるなんて・・・。

晃輝先輩は私を抱きしめるような形になっていた。
顔と体が近い。
一気鼓動が早まる。

「あ、ゴメン・・・。」

先輩は一瞬顔を赤くして、
慌てて私の体を離した。

「すみません・・・。」

「ってか、大丈夫?怪我ない?」

「はい、大丈夫です・・・。」

「ゴメン、咄嗟のことだったから・・・。」

「いえ、良いんです。
 それより・・・ありがとうございます。」

「ははは。良いよ。
 あ、コレ、楽譜。」

「ありがとうございます。」

何事も無かったかのように楽器庫を出る。
やはり、さっきのこともあってか、
気まずい雰囲気が流れる。

でもそんなことどうだって良い。
嬉しかった。
あんなとこで抱きしめられるなんて思っても無かった。
何よりも、私を守ろうとして、
身を挺してくれたことが嬉しかった。

そのあと、パーカスパートと先輩で、
質問の時間を取ったり、
一緒に練習したりした。

晃輝先輩は妙に明るかった。
来るのが2回目なためか、
慣れてしまったのだろう。

楽しい時間はあの時のようにすぐ過ぎてしまい、
半日を終えようとしていた。

家路に着こうとすると、七海が妙に上ずった声で
話しかけてきた。

「紅璃!!今晃輝先輩、先生と話してるみたいだったから、
 ちょっと待ってようよ!」

「え?待ってるって・・?」

「もう、馬鹿だなあ。晃輝先輩を待つに決まってるでしょ。
 一緒に帰るの!
 私は途中で消えるからさ。」

「え〜。無理だよ〜泣」

「良いじゃない。せっかく遠いなか出向いてくれてるのに。」

「え?遠くからって?どういうこと?」

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