怪談階段 後編

白山こっこ  2006-08-09投稿
閲覧数[902] 良い投票[0] 悪い投票[0]

実によくありそうな噂だったが、その他の噂は本当に遭遇すると死亡なんてものばかりで、そうでもなさそうなこの噂を選んだのだ。
次の日になり、彼は早速十二時に第一校舎へ忍び込んだ。夜道だけでも怖かったし、これから学校にまで入るのかと思うと震えが止まらない。しかしそんな自分を無理やり奮い立たせ、校舎の入口の檻をよじ登るように越える。
人間の入口は北門と南門に大きく分かれており、残りは給食を運ぶトラックが通り抜ける大きな物しかない。第一校舎は北側なので北門から入り、そのまま奥の階段へ進んだ。
一分程歩いてたどり着き、いよいよ階段を下に降りる。二階に一旦上り、それから一階へ一段一段慎重に、
ゆっくりと、
確かめながら、
一歩ずつ、
進んで行く。
下に下りきったところで、達成感が彼の中に湧き上がってきた。もう二度と来ないぞと思いながら帰ろうとする…
が、その階段には、


まだ下があった。


おかしいな、三階から降りたんだっけ、と思いながらその先をよく見る。真っ暗な中を進んだのでなにも見えるはずはないが、彼は好奇心をそそられて下に降りてみた。さっき成功したのでもう大丈夫だろうと思ったのだろうか…また慎重に降りて行く。が、慣れがきたのか途中から普通の速度になった。
そして下に降りきる。まだ続く。怪しいと思うことを忘れ、彼は吸い込まれる様に続きを降りた。そして三度降りてもまだ続く。彼はこれを何度か、それこそ操られたかの様に繰り返した。
だが途中ではっと我に帰り、彼は辺りを見回す。こんな事をしている場合ではない。帰らなければ…。
彼は、物凄い速さで駆け上がる。あまりの恐怖に汗もでない。しかし、ここまでは降りていないという所まできたが、今度は上に続く階段がある。もしかしたら通り過ぎたのかと思い数階降りるが、結果は同じ。携帯も圏外。恐怖に正気を失いそうなとき、

ゴトリ

音がした。
その音の方向に振り返ると、
踊り場のトイレ。

逃げようとしたが、金縛りにあって動けない。
そうこうしている内にトイレのドアが開く。

ギギ…ィ…

ゆっくりと開くそれ。
逃げたい。逃げられない。
そして、完全にドアが開く。
その中は真っ暗で、
何も見えなくて、
大きな黒い手が出て来て…

彼はその後見つかっていない。何故なら、嘘の多い彼の話は誰も信じていなかったのだ。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 白山こっこ 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ