新に抱きしめられ、あの頃に戻ったような気がしていた…。
私も、新を抱きしめる。
しばらくして、お互いに手を離す。
「ごめん…つい…」
俯き気味に新が言う。
「ううん。嬉しいよ…」私は新に優しく応える。
「真理さん、結婚したんだってね。お母さんから聞いたよ。おめでとうございます」
新におめでとう言われるのは、なんか複雑な気持ちだ。
「ありがとう。今、子供も2人いるの」
雨が、だんだんと強く降り出していた。
「正直…」
新は私から目をそらして言葉を続けた。
「それを聞いた時、ショックだった。俺は真理さんとの約束を支えに頑張ってたから…」
「私だって…そうよ」
「でも、よかった…真理さんが幸せになってるなら…」
「新…は?」
新はふっと笑顔をみせる。
「6つ上の彼女がいるよ」
「年上が好きね」
二人で笑った。
「新、今、幸せ?」
「うん。今、幸せだよ」
今、この瞬間が、私たちの本当の別れ。
いつの間にか雨はあがり、空には虹が架かった。
END