遠い遠い君へ

くろ  2006-08-09投稿
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「もしかして紅璃、知らなかったりする?」

「だから、何が?」

「晃輝先輩、高校上がったときに
 5高の近くに引っ越しちゃったから、
 今はもうここには住んでないんだよ?」

「え・・・嘘・・・。」

私は何か勘違いしていた。
まだ先輩はここにいて、会おうと思えばすぐに会えるかも
なんて考えてた。

「晃輝先輩の家、駅から遠いし、
 しかも親がいないから、駅まで行く手段が全然無かったから、
 引っ越したんだって。
 あ、これ先生からの情報ね。
 まあ、どうにもこうにも、アンタは今日は何が何でも
 出来るだけ長く晃輝先輩と過ごさないと、
 すぐ忘れられちゃうよ?」

「嘘・・・。」

なんか一気に晃輝先輩が遠くの存在に感じてしまう。
今日が終わってしまえば、もう顔を合わせることなんて無いかもしれない。

「だから紅璃、今日は一緒に帰るの。
 私が上手くやるから。ね?」

「うん・・・七海・・・ありがとう。」

七海の言うとおりにすることにした。

「あ、晃輝先輩来た!!」

私は慌てて顔を伏せる。

「せんぱーい、今日紅璃がまだ聞きたいことがイッパイあるって
 言うんで、一緒に帰ってもらっても良いですか?」

「良いよ。じゃあ、早く帰ろう。
 雨が降りそうだ。」

空は私の心の中のように、暗く、今にも泣き出しそうだった。

七海は私にウインクをすると、
「じゃ、私塾なんで、こっちから帰りますね。
 さようなら!」
と言い残して、わざと逆方向に走っていった。

妙に細い歩道を、二人で並んで歩く。
私の家と駅からは、案外近い。

「で、聞きたいことって何?」

「あの・・・その・・・。」

「ん?」

「私・・・5高に行きたいです!!」

「マジ?本当?
 結論はやいね(笑)」

「そ、そうですか?」

「でも、一緒に行けないね。
 住んでる場所も違うし、番線だって違うし・・・。」

え・・・?先輩は今なんて・・・?

「しかも、学年が入れ違いだ〜・・・あ〜残念。」

そういえば、私が5高に入った頃には、
先輩は卒業してしまっている。
また存在が一つ、遠くなってしまった。
今はこんなにも近くにいるのに・・・。

でも、一緒に行けないって・・・。
もし同じだったなら、一緒に行ってくれたの?










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