「そうですね・・・。もっと色々なこと教わりたかったです・・。」
「あはは。でも、俺、打楽器専属トレーナーでたまに
顔出すかもw
大体OGとかOBがやるんだよね。」
「そうなんですか。なら安心です♪」
「あ・・・雨だ・・・。」
「え・・・?」
バケツをひっくり返したように雨が降り注ぐ。
「やばい!こんな寒い日に濡れたら風引く!!」
そういうと先輩はカバンの中から折りたたみ傘を取り出して、
「さあ、入って!走るよ。」
と私の手を引っ張って走りだした。
折りたたみ傘は小さく、体が密着せざるおえなかった。
私が少しでも傘からはみ出ようものなら、
「ぬれちゃうよ。」と、私の肩を抱き寄せてくれた。
すぐ近くに駅のホームが見えた。
「お、もうすぐじゃん。頑張れ。」
「は、はい・・・。」
ばしゃばしゃと、音をたて、
駅のホームに駆け込む。
「はあはあ・・・濡れちゃったね・・・。」
「そうですね・・・。」
寒い。にわかに私の体が震えだす。
そんな私に気付いてか、先輩はさっきまでブレザーの下に
着ていたカーディガンを私にかけてくれた。
「え・・・?先輩風邪引いちゃいますよ。」
「大丈夫大丈夫。俺はあと電車の中で揺られるだけだし、
俺寒いの大丈夫だから。」
「で、でも・・・。」
「いーの。あ、電車来ちゃった。
じゃあ、また会おう。」
「はい。さようなら・・・。」
先輩は改札口の中に消えていく。
先輩のカーディガンは良い香りがして、
とても暖かい。
今日の記憶を辿る。
なんかとても混乱した一日だった。
にやけながら家に帰ろうと後ろを振り向くと、
ビショ濡れの女が立っていた。