遠い遠い君へ

くろ  2006-08-09投稿
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「そうですね・・・。もっと色々なこと教わりたかったです・・。」

「あはは。でも、俺、打楽器専属トレーナーでたまに
 顔出すかもw
 大体OGとかOBがやるんだよね。」

「そうなんですか。なら安心です♪」


「あ・・・雨だ・・・。」

「え・・・?」


バケツをひっくり返したように雨が降り注ぐ。

「やばい!こんな寒い日に濡れたら風引く!!」

そういうと先輩はカバンの中から折りたたみ傘を取り出して、
「さあ、入って!走るよ。」
と私の手を引っ張って走りだした。

折りたたみ傘は小さく、体が密着せざるおえなかった。
私が少しでも傘からはみ出ようものなら、
「ぬれちゃうよ。」と、私の肩を抱き寄せてくれた。

すぐ近くに駅のホームが見えた。

「お、もうすぐじゃん。頑張れ。」

「は、はい・・・。」

ばしゃばしゃと、音をたて、
駅のホームに駆け込む。


「はあはあ・・・濡れちゃったね・・・。」

「そうですね・・・。」

寒い。にわかに私の体が震えだす。
そんな私に気付いてか、先輩はさっきまでブレザーの下に
着ていたカーディガンを私にかけてくれた。

「え・・・?先輩風邪引いちゃいますよ。」

「大丈夫大丈夫。俺はあと電車の中で揺られるだけだし、
 俺寒いの大丈夫だから。」

「で、でも・・・。」

「いーの。あ、電車来ちゃった。
 じゃあ、また会おう。」

「はい。さようなら・・・。」

先輩は改札口の中に消えていく。
先輩のカーディガンは良い香りがして、
とても暖かい。

今日の記憶を辿る。
なんかとても混乱した一日だった。

にやけながら家に帰ろうと後ろを振り向くと、
ビショ濡れの女が立っていた。



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