遠い遠い君へ

くろ  2006-08-09投稿
閲覧数[275] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「ヒッ・・・。」

思わず私は小さく悲鳴をあげる。
どこかで見た顔だ。

「す、すいません、どうしたんですか?」

ずぶ濡れの女は口を開いた。

「紅璃・・・。私よ。
 佳奈よ。」

「え・・・?先輩!?」

佳奈先輩が何故こんなところに?

「ずっと付けてた。あんたと晃輝先輩を。」

「え・・・?」

「ちょっと来なさいよ!!」

佳奈先輩は、私の腕を爪を立てて掴むと、
土砂降りの雨の中へ連れ込んだ。

「あんた、私が晃輝先輩のこと好きだって知ってたよね?」

「はい・・・。」

「なのに・・・どうして?
 一緒に帰ってるの?
 なんでアンタが晃輝先輩のカーディガンを着てるのよお!!」

佳奈先輩は私を憎悪の目で睨み、
カーディガンを凄い力で引っ張ってきた。

「や、やめてください!」

私は、小さく抵抗した。
相手が先輩だと思うと、大それた抵抗はできなかった。

「本当だったら、私があの傘の中に入って、
 あの手に肩を抱き寄せられて、
 私がその温もりをもらうはずなのに・・・。」

先輩は美しい顔をグシャグシャにして泣き出した。
七海が言ってたことは本当だったんだ・・・。
急に恐くなってしまった。

私が押し黙っていると、
先輩はつかつか歩み寄ってきて、私の頬を掴みあげた。

「憎たらしい。泥棒。
 あんた最低よ。くず!!」

そう言って私を罵ると、私を物凄い力で押した。
ばしゃあ!!
水溜まりに突っ込む。

「ふ・・・ふふふ・・・。」
佳奈先輩は、私の髪の毛を掴むと、
結構深い水溜りに顔を押し付けた。

苦しくて、顔をあげようとしても、
先輩の力に勝てず、動かない。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 くろ 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ