「ねぇ…あんたは、一体何者なの…?」
レミーシュと共に彼女のアジトに戻り、ゼルは聞かれた。
結局、ゼルはレミーシュの希望もあり、レミーシュが住む地下室に来ている。
しばらくはここにいる事になる。
魂喰いを、始末するまでは。
「知る必要はない」
「…でもさぁ…」
生温い雨に濡れた衣服を拭きながら、レミーシュは複雑な表情を浮かべる。
「正体不明な奴を住まわせたくないか?まして、俺は男だしな」
「…意地悪な質問だね」
レミーシュは軽く頬を膨らませた。
「私には、ゼル…は、フェルゼル兄しか見えないし…だから、かくまってあげてるんじゃん…」
「…感謝している」
ゼルの優しい言葉と、ルビー色の瞳に、レミーシュは一瞬で目をそらした。
「…そっ、その瞳ズルイよっ…!」
「…すまんな、元々だ」
煙草に火をつけ、ゼルはレミーシュから目をはなした。
「…お前は、フェルゼルとやらによほど執着しているな。
…愛していたのか?」
「…バっ、バカ!!…い、いい、いきなりそんな質問!?」
「…おかしいか?合理的だと思うが」
「…会ったばかりのアンタに言う必要ないっ」
「…そうか。フェルゼルは…どんな男だった?」
レミーシュは困りながらも、瞳の色は輝いているように見える。
「いい男だったよ…いい人じゃないけど。
いつも…私みたいだからって、白い薔薇を買ってきてくれた。
…人を殺して手にした金でね。
レミ、レミって呼ばれて、いつも色々話して、教えてくれた。
兄であり、父みたいで、誰より私には優しかった…。
いつも、街を支配して自分が改革していくって息巻いてたよ。
力に貪欲で、得るためなら何でもした。
だから…私も何かの力で、だから必要としてるんだって思ってた。
…今となったら、分からないんだけどね」
そう言って笑うレミーシュの表情は、おそらくこの街の誰も持っていないものだろう。
それを見て、ゼルの表情は逆に少し霞みがかった。