此処は、魔物が住まう崖淵斜陽館でございます。本日の、お客様は『心』でございます。お楽しみ頂ければ幸いでございます。
「おい!何してるんだよぉ!」
「スイマセン、誤って水を掛けてしまいまして、誠に申し訳ございません。」
水を掛けられた男の怒りは収まらない。
「この野郎!」
とうとう、殴りつけてしまった。
水を賭けた男は、道に倒れたまま動かない。
周りに居た、若い男性三人が、殴った男を取り押さえて、救急車と警察に連絡をした為、殴った男は逮捕されてしまった。
殴られた男は、軽い打撲と診断された。
逮捕された男は、傷害罪で有罪、一殴りで、会社は解雇、裁判や保証金等で、2000万円の借金。
「俺は、なんて馬鹿な事をしてしまったんだ」と嘆いても、後の祭である。
殴られた男は、打撲は治ったが、恐怖神経症という、心の病を一生涯背負って生きて往かねば成らない。
水に因って、二人の男の人生が狂ってしまった。
天上界から見ていた、神様が弟子に言う。
「これで、良いのじゃ」
弟子は聞き返した。
「神様ともあろう方が、二人も不幸にして良いのですか?」
神様は、笑って答えた。 「あの二人はな、数年後に大事件を犯して何万人もの命を奪う事に成っておったのじゃ」
納得出来なかった弟子は…
「結局は神様のお心次第なんじゃないかなぁ」とは、決して口が裂けても言えなかった。
如何でございましたでしょうか。
今宵の崖淵斜陽館…
次の、お客様は貴方かも知れません。