僕はバーで盛り上がった、その名前も知らない妙な男と朝まで飲み明かそうと、男の自宅へ移動した。
次々と、僕の目の前に日本酒や焼酎が並ぶ。
正直、僕はビールは違うと思うんだよね…。
「さぁさぁ、酒以外何もない部屋ですが、どうぞくつろいで下さいでゲス」
「いや、日本酒に焼酎なんて、アナタ分かってるじゃないですかぁ」
僕は男に酒を注がれ上気分だ。
しかも、それが美味い。
聞いた事のない銘柄なんだけどなぁ…。
「こんな美味い酒、僕みたいな他人にいいんですかぁ?」
「構わないでゲス。人に振る舞う幸せをもらってるでゲス」
「いやぁ、ありがたいっす。…是非、名前だけでも教えて下さいよぉ〜」
「いやいや、本当に名乗るほどじゃ〜…ごき・ぶり夫とでも呼んで下さいでゲス」
爆笑した。面白い人だなぁ。
「はははは、じゃあ、ぶり夫さんですか」
「はははは、そうでゲス」
「そういえば、ゴキブリで思い出した。
僕、昔ゴキブリ大嫌いで、叩く事もできなくて、よく掃除機で吸ってましたよぉ」
「はははは、そりゃ可哀相な話だぁ(笑)
…じゃあ、お兄さんは掃除機の吸い込み口は見た事あるでゲスか?」
「…そういえばないなぁ…ぶり夫さんは?」
「あるでゲス。暗い、くらーい、真っ暗闇でゲスよ」
「へぇ〜…」
「見てみるでゲスか?」
そう言って、彼は掃除機のノズルを僕に向けてくれた。
「どれどれぇ…」
掃除機の穴から見えるのは、ただただ暗い…
………クライアナ。
カチッ。
ウイィィィィィーン。
終劇