それは、短剣だった。
黒い鞘から引き抜いてみると、その偉大さが露骨に分かった。
「護身用だ。」
ダグラスは屈託のない笑みでそう言う。
「よっぽど俺に死んでほしいみたいだな。」
錆びだらけの、もはや輝くことすら忘れてしまったその短剣は、お役御免とばかりにフェレットの手を撫でた。
「おいおい、それは家の家宝なんだぜ?それなりに価値はある代物だ。」
「仮にそうだとして、お前のその腰に帯びている刀が、この短剣をはるかに超える代物に思えてしまうのはなぜだろうな。」
「これか?」
ダグラスは、腰にある刀の鞘を抜いた。
ため息のでるほど美しい銀色の剣は、太陽の光を浴びてさらに輝き、フェレットのお手元に横たわるそれと愕然たる違いを見せつけた。
「ほう、今、少なからず殺意を覚えた俺は間違っているのだろうか。」
フェレットは、肩を震わせ、乱暴に短剣をしまいこむ。
「すまないな、フェレット。この方が面白いと思って、、。」
「野郎っ!」
フェレットは、ダグラスが言い終えるより先に、短剣片手に飛びかかる。
だが、軽々とダグラスにかわされ、挙げ句、足を引っ掛けられ顔面から地面に衝突する。「あらっ、やっちまった。」
素っ頓狂な声と共にダグラスは刀を鞘にしまうと、