メールは便利だ。いつも、あたしの言葉を語ってくれる。でも、いつも本当のあたしの気持ちは伝えてくれない。人って、どうも文章ではすべてを伝えられないものらしい。自分の伝えたいことを正確に文章にできたら、みんな小説家とか、それで生きていけるだろう。
ほとんどの人がメールを送り、自分の気持ちを相手に伝えていると思っている。それは半分も自分の気持ちが相手には伝わっていないことを知らない。あたしは知っている。メールに書かれた文が相手にもたらしている影響を。みんなは知らないだろう。本当に無意味なメールを。
あたしは、なんにもとりえもない、普通のＯＬ。化粧品をみさかえもなく購入し、なんも意味もないダイエットを試す。平日はテレビドラマを見て、非日常を楽しむ。平凡な毎日を送り、平凡に仕事をこなし、平凡に上司のセクハラに笑ってやり過ごす。
でも、恐ろしくメールの文を作るのが得意。人にも頼まれる。モテる男はうらまれずに女をふる方法を。モテない男にはデートの誘い方を。振り向いてくれない男を誘うメールを。みんながあたしに助けを求める。ある人は付き合っている彼氏の本当の気持ちを知るために試すようなメールを。さまざまなリクエストを聞きながら、メールを作る。みんな満足してるみたい。あたしからしたら、そんな上辺だらけの文で気持ちは伝わらないとおもう。
あたしは基本的にメールは嫌い。メールを見て、真意を知ったとか伝えたとか全部うそだと思うから。メールはいい部分しか語ってくれない。
だから、プライベートメールはすべて短い。それですべて伝わるから。
でま、あたしは逢いたいのに逢いたいとも送れない相手と関係してる。あたしが逢いたいと送ると相手はもう一生、逢ってはくれないだろう。
いくらメールの達人でもその人だけにはメールできない。
メールしたことで関係を壊したくないから。作ったメールを受け取る人の気持ちは手にとるようにわかるのに彼の気持ちだけは、まったくわからない。逢いたい。逢いたい。逢いたい。逢いたい、逢いたい。素直に言えたらいいのに。素直に逢いたいって送っても返信はない。彼とのメールはいつも彼からの一方通行。それでもいいと思ってる。あたしの計算されたメール文より彼のメールのほうが価値があるから。いつも彼からのメールを待っている。まわりの幸せを叶えながら。
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