施設に来た翌日にあげたポストカードがきっかけとなって、
大資からは会う度に毎回、「ポストカードをいただけますか」、と聞かれるようになっていた。
聞き方は控えめだが、あまりにも必死というか、すがるような一生懸命さに、
塚本の方も、毎回あげる決心をしていた。
そんなに喜ぶなら、と星野富弘さんのポストカードをシリーズごとに一枚一枚手渡していたが、
しまいには全シリーズ揃いました、と言われ、
塚本自身がポストカードを描くようになっていた。
毎日の聖書を読む時間から、
気になる言葉をピックアップしては、
手書きの文字と水彩画でカードを描きためた。
「この絵、施設の子供たちの描く絵のように芸術的ですね。」
と猫のような、犬のような、狐のようになった絵を見て、
大資に言われることもあったが、
それでも、少しずつ、
日に日に上手くなっていく自分の絵に、
塚本自身が意欲を増していった。