大資は、相変わらず塚本の渡す聖書の言葉入りのポストカードを、
毎回毎回非常に喜んでくれた。
塚本がりらに絵本の読み聞かせをしていると話し、
大資も真似して施設の子供たちに読み聞かせを始めた頃、
「僕って、自閉症だったんですよね。」
と大資が話し出した。
人とまともに顔を合わせることはできず、
普段、自分の感情を表わすことのできない、彼の言葉は投げやりで、ぶっきらぼうで、破壊的だった。
両親が見捨てそうな程、手を焼いていた頃に、
たまたま近所に住んでいたヘルパーさんが引き取ってくれた。
厳しい夫婦ではあったが、時に暴れて手につかなくなる大資を、
バンドで押さえる時もありながら、それでもしっかりと向き合ってくれた、と言う。
旦那さんの厳しい目の奥にある、何とかして立ち直らそうとする優しさ、
奥さんのいつも祈っている姿、
その家の居間には、
いつも二人の二冊の聖書が置いてあったと言う。
それでか、と塚本は目の前の大資がすがるように、いつも、聖書の言葉入りのポストカードを求めてきた理由を知った。
「それなら、聖書を求めてくれた方が早かったじゃん。」
という言葉は聞き流されたが、
「それで僕も、塚本さんたちのように、人を助けれる人になりたいんです。」
と彼の持ち前の熱気を込めた話し方で、語った。