彼はほとんど、読み書きが小学生から中学1年生レベルまでしかなかったのが、
奇跡的に癒されて、
中学、高校を卒業し、
福祉の専門学校に通うまでになった。
そんな中で、専門学校を卒業し、この施設に就職した先、
自分の力の限界にぶつかり、当惑していたという。
塚本さん達のようになることはできず、自分と塚本夫婦と何が欠けているんだ、と困惑していた頃、
受付で、施設見学とボランティアの申請をしている、
聖書を持ったひとりの男、
塚本優二と会った。
同じ名字に、聖書を持つ、という共通点。
塚本にとってみれば、特にどうでもよいことではあったが、
大資にとっては、今は亡き、塚本夫婦の面影、
希望の光を見た感じだった。
それで、あんなにもばったり出くわしたのか、とマイペースであまり他人のことを気にしない塚本は、
ようやくあれが偶然やたまたまではなく、
大資が追っかけるように、自分の周りについていたことを知る。
「きっと、今にこの施設の中での自分のやり甲斐を見つけますよ。」
塚本は励ますつもりでそう言ったが、
祈りの中で、大資が楽しそうに子供たちに笑いかける姿を見ていた。