最後にどうか、岬の事を忘れないで下さい。
深くお願い申し上げます。
岬の父より』
「…みーくんのお父さん…。」
龍吾の目にも涙がとめどなく溢れる。
最初は、怖くて暴力お父さんだと思っていた。けど、今はこんなに…
「…オレ、頑張るよ。名古屋に行っても。」
今日から、別々の道を歩み始める。
龍吾の袖は、涙でにじんでいた。
受けとめなければ…これが現実なんだから。
さようなら…みーくん…
ごめん、もう本当に会えない…
オレは、名古屋に行くから。
龍吾は自転車に乗り、泣きながら家に帰る。
もうすぐ親が迎えに来る。みーくん。オレは、名古屋に行くと決めた。みーくんが憧れていた…幸せな家族。作ってみせるから。
誰にも負けない。幸せな家族を。
3月30日。
関東の桜も満開を迎え、春本番です。
そっちはどう?こっちは相変わらずかな。
陽太が一緒に遊ぼうって言うからちょっとうるさくて。
…って、普通に話せるわけないよね。
あれからメールも一切来ないし、どうしたのだろう。…あっ…メール…。
『今、幸せな家族がいます。オレは今、幸せです。』
よかった。
携帯を閉じ、ほっとする僕がいた。
4月からは、高校生。
「おい岬。朝ご飯。」
「…はいはい。」
僕も、幸せな生活を掴めました。
少し小さいけど。
でも本当は、龍吾がいた方がもうちょっと楽しいけど。
まっ、わがまま言ってらんないね。
オレも、名古屋のマンションで、幸せな生活を送ってます。高校は何とか、野球強い高校が決まったよ。
早く高校行きてぇな…
まっ、オレの個人的な意見なんだけど。
桜、どう?名古屋は少し散ってる感じかな。
「ちょっと龍吾!そこどきなさいよ!」
「んだよ!こっちは歯磨きしてんだぞ!」
「うるさいわね〜そもそも歯磨きしてもあんた口臭いから。はい、どく!」
「なんだとこの野郎!」
「やる?いいわよ。」
「こらこら!また高校生にもなって!」
「…ふん!」
そうだね。もう2人は
別々の道を歩み始めたんだね。
キャッチボール、また出来るといいけど…。
こうやって、あの日みたいに…
晴れた日にね。
龍吾はあのバットで素振りの練習をしに、出かけていった。
この友情は、一生忘れない。ずっと、ずっと。
結局、僕と龍吾は、2年あまりの友情で終わった。
龍吾は名古屋へ、僕は柏市へ…
もう友情は、終わったかに見えた。