==
「…何で?」
家に帰り着いた私は、ぽかんと口を開けた。
玄関先にある車は…
間違いなく、信の家の車。
ふらふらと、そこに歩いていくと…。
「よぅ」
仏頂面で、信が立っていた。後ろには、信の両親と妹もいた。
家族の前だからだろう。信はムスッとした表情だ。
「反抗期だねー」
私がいたずらっぽく笑って言うと、信は更にムッスリとして言った。
「…ぅるせー」
ところで何の用だろう?
最後の挨拶回りでもしているんだろうか?
「…コレ」
突然信が、後ろ手に持っていた直径30センチほどの箱を差し出した。
「これって…え?これ、もしかしてケーキ?」
私は あわあわしながら受け取る。
「合格祝い!買ってきたの」
私の問いに、信の母親が答えた。
「わぁッ、ありがとう…」
私は箱と信の顔を交互に見ながら礼を言った。
すると、信が目線を逸らして言う。
「多分…お前と会うの、これっきりになると思う」
「!…」
私は一瞬、言葉を詰まらせた。
「そっか。最後かぁ…」
苦笑いを浮かべて、私は慌てて繕った。
(わかってたことじゃん。明後日引っ越すんだって。落ち着けよ、最後くらいカッコつけようよ、私…!)
自分を強制的に落ち着かせようと、私は自分自身に言い聞かせた。