「それよりうち、
これからどうしよう」
あたしのだるそうな言い方に
翔ちゃんも唸る。
「そうやなあ…」
あたしは考えこむ。
こんなことで
立ち止まってるわけには
いかへん。
なんだか少しでもはやく、
夢叶えへんとあいつに
本当に会えなくなる気がして。
「そうや!
翔ちゃん、ドラム叩いたこと
あるんやんな!?
中学の文化祭で
和とバンドやってたやん!」
あたしの頭に今はもう
ぼやけかけた懐かしい光景が
浮かぶ。
「ああ…でもほんま
あんときだけやって。
ほとんど叩か…」
「じゃあうちとバンドやろー!!」
あたしは翔ちゃんの話を遮った。
「はあ?
でも俺ほんまにそんな
叩かれへんよ?」
あたしはどこでもいいから
ギターを弾いていたい。
少しも休んでいたくない。
翔ちゃんはあんまり
のり気じゃないらしい。
「お願い!うちらは
友達やんか」
その言葉に翔ちゃんは
黙りこむ。
何かを堪えて
あたしを見つめるその目には
切なさが浮かんでた。
あたしは翔ちゃんが
のみ込んだ言葉も
その切なさの理由も
ちゃんと知ってる。
あたしはその目に
気づいていないかのように
足早に自転車を押し進めた。