「……ジーナと同じこと言うんだね。二人共気にしすぎだよ。それに、あれは僕の力不足が招いた結果だ。僕は、責めるんなら自分を責めなきゃいけない。」
「そんなこと、」
「いや、そうなんだ。特にこれからは、僕はみんなに迷惑をかけるわけにはいかないんだ。……美香ちゃんの想像の力は、犠牲となって消えてしまったんだろ?」
美香はハッと口をつぐんだ。ホシゾラが、ばつが悪そうに目をそらす。きっと彼女からそのことを聞いたのだろう。
美香は昨夜、自分の部屋へ戻った後、何度も想像の力を使おうと試みた。ところが、何も出てこないばかりか、頭の中に想像物のはっきりした像を結ぶことさえできなくなっていた。
美香はこの時、犠牲の意味がはっきりとわかった。美香は想像力そのものを失ったのだと。普通の思考やそこから結びつく程度の想像ならできるが、まったく新しいものを考え、生み出す力が、美香には残っていなかった。美香は愕然とした。犠牲として捧げたのは、想像を現実にする力だけだと思っていた。だが、そんなに甘くはなかった。美香は子供だけが持っている、まったく新しい、自由な力を、失ってしまったのだった。
王子は急に厳しい表情になると、美香の後ろに突っ立って話を聞いていた耕太に視線を移した。彼にしては珍しい、睨むような鋭い目付きだった。
「君はもちろん、美香ちゃんを守ってくれるんだよね?」
耕太は自分に向けられた言葉にぴくりと反応すると、負けじと王子を睨み返した。
「当ったり前だろ!」
「……ふーん。ならいいけど。」
王子はふいと視線を反らした。耕太はその態度にかちんときた様子で、抗議しようと声を荒げかけたが、逆に美香に怒られた。
「王子は怪我人なのよ!?何、喧嘩売ろうとしてるのよ!」
「だってあいつが、」
「だっても何もない。」
耕太は後ろから聞こえた声に振り返る前に、ごつんと頭に拳骨を食らった。
「〜〜〜〜!」
声もなくうずくまる様子からして、よっぽど痛かったのだろう。美香は少し同情したが、殴った相手が相手なだけに、何も言うことができなかった。
ジーナは仁王立ちで腕組みをし、耕太を上からじろじろと眺めている。耕太の方はというと、キッと涙目でジーナを睨み上げた。
「痛ってえな、おばちゃん!!」
耕太が二発目の拳骨を食らう音を、美香は顔を歪めて聞いていた。