「はあ…」どれぐらい時間がたったのだろう。反乱軍の策略にハマり、風の谷底に堕とされてから。「大丈夫か?ナオミ」「えぇ。お陰様で」と、言いながら、彼女は―ナオミはまた溜息をついた。「………」本当は、特に心配することはない。ガンスナイパーも、シャドーフォックスも、戦闘本能は眠ってはいるが起こせば戦えるし、食料もかなりの量が上から落っこってきている。ただ、バラッドと一緒だからこそ、不安なのだ。二人の一応の位置付けは『恋人』で、一緒にチームを組んでいる。「ほら」差し出された白いカップ。暖かな湯気が頬を撫で、珈琲の薫が鼻を擽る。この谷は、地に草こそ生えているものの気温は低い。少し甘い珈琲の温度を唇で感じ、口の中に流し込む。飲み込むと、通った道が解るほど、体温は低かった。ここで二人の服装と性格について話しておこう。ナオミ・フリューゲル。17歳、女。真紅の髪に、深い紫の瞳。今着ている私服は赤と黒のコート、肩から肘の少し前までは白い肌は出て、前髪には深緑、エメラルドの髪飾り。不良嫌いで大人っぽく、孤独で美しい。自分の決めたことは一心に貫き通す強い心を持ち、射撃の名手で『紅き閃光』の通り名で呼ばれる。対するバラッド・ハンター。17、男。煌めく茶色い長髪に、碧海の瞳、彼は今ゾイドバトル用のバトルスーツを着込んでいて―バトルスーツといっても制服じゃない―青と水色の膝までのノースリーブコート。ファスナーの入った紺色のパンツ。首に下がる、深紅、ルビーの首飾り。クールな二枚目で金に煩く無愛想だが腕はあり、本当は純粋で心優しい所も持ち合わせ『狐高の賞金稼ぎ』と呼ばれている。はっきり言って二人が並ぶと画になるが、ここではそうはいかない