デッド オア...?

兼古 朝知  2009-11-16投稿
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「じゃあ、次のとこ行かなきゃなので!また会おうね!」
信の妹が元気な笑顔を浮かべ、私に手を振る。
「うん、どこかで…!」
私も笑い、手を振り返した。
「じゃな」
短く言って、信が車に乗り込もうとする。
「…信」
「何…?」
私は咄嗟に引き止めてしまった。信が振り返る。
その表情は、いつもと変わらない、信だった。

…君は知らなかったろうね?今も知らないだろうね?そしてこれからも…知りはしないだろうね?
(言えない、言えないよ…スキだなんて…)

…その時、私が自分がどんな顔をしていたかは知らない。

「何だよ…妙な顔して」
信の言葉で、ハッとする。
「…ううん」
私は作れるだけの笑顔で、言った。
「信…さよなら」
「おう。…バイバイ」
私も信も、『また』とは言わなかった。
それだけ遠くに引っ越してしまうから…。
また逢える保証なんてどこにもないもの。
信たちの車が見えなくなるまで、私は手を振っていた。
(まただなんて傲慢なこと…言えるハズないじゃん)
信が私の家に来てくれただけで、もう十分じゃない…。また会えただけで…それでいいじゃない。

受け取ったケーキの箱は、箱についていた露以外に、いつの間にか別の塩辛い水に濡れていた。

また会いたい…。
そんな気持ちを押し殺して、私は祖父へ参りに来た客を座敷に案内した。
「おじーちゃん…ゴメン」
小さく、そうこぼして。



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